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部品を組み立てたり、分解したりする際に欠かせないのが「ねじ」です。その重要な機能を担うのが、ねじ山を正確に加工する「ねじ切り」です。なかでも切削加工によるねじ切りは、少量生産から特殊ねじまで幅広く対応できることから、多くの現場で重宝されています。
この記事では、切削加工によるねじ切りの基本から代表的な加工方法、さらには精度を高めるための工夫やトラブルの防止策まで、現場目線で丁寧に解説していきます。
ねじ切りとは、材料の表面や内部にらせん状の溝を加工することで、部品同士の締結や位置決めを可能にする重要な加工工程です。家庭用品から精密機器、さらに産業用機械に至るまで、ねじの用途は多岐にわたります。
とくに製造業においては、製品の組み立て性やメンテナンス性を左右する要素として、ねじの品質は非常に重要視されています。そのため、ねじ切り加工には高い精度と安定性が求められます。
ねじの製造方法には、転造や鋳造といった手法もありますが、切削加工によるねじ切りにはそれらにはない柔軟性があります。試作品や少量多品種の製造では、金型を用いる転造よりも対応力が高く、加工精度も優れているため選ばれる場面が多いのです。
また、硬度の高い材質や特殊なねじ規格にも対応しやすく、特注部品や高精度な要求を伴う業種でも活躍しています。
旋盤を使ったねじ切りは、素材を回転させながらバイトと呼ばれる切削工具を進めることでねじ山を削り出す手法です。この方法は、ワークの内側・外側のどちらにもねじを切れるだけでなく、ねじのピッチ(ねじ山の間隔)や形状も柔軟に設定できる点が強みです。
特に、NC旋盤(数値制御旋盤)を活用すれば、プログラムされた動作によって高い繰り返し精度で、安定した加工が可能となります。これは、複雑なねじの大量生産において大きなメリットとなるでしょう。その一方で、手動旋盤によるねじ切りは、高い技能が求められるものの、作業者が直接細かな調整を行いやすいため、試作や一点ものの加工に向いています。
ねじ切り加工には、旋盤を使った方法以外にも、専用工具を用いる手法があります。内側にねじを形成する内ねじ切りにはタップ加工が、外側にねじを作る外ねじ切りにはダイス加工が一般的に用いられます。これらは専用工具を使ってねじ山を成形するため、比較的手軽に始められる点が魅力です。
ただし、加工対象の材質や径によって、使用するタップやダイスの種類を慎重に選ぶ必要があります。とくにアルミや真鍮のような軟質材では切削性が高く加工がしやすい反面、ねじ山のつぶれに注意が必要です。
ねじ切り加工では、バリの発生やねじ山の欠け、寸法の誤差といったトラブルがつきものです。これらの不具合は、工具の摩耗や不適切な切削条件によって生じるケースが多く見られます。
また、加工中の熱によって材料が膨張し、ねじのピッチが微妙にずれるといった問題も発生することがあります。こうした要因を見逃すと、ねじの機能が損なわれるだけでなく、組立時の不具合や製品不良につながる可能性もあるため注意が必要です。
ねじ切りの精度を高めるためには、まず使用する工具の選定が重要です。適切な刃先角やコーティングの有無、素材との相性などを見極めることで、加工時の負荷を最小限に抑えることができます。
さらに、切削速度や送り量などの条件を最適化することで、ねじ山の仕上がりが向上し、バリの発生も抑えられます。また、加工中に冷却液を適切に使用することで、熱による変形や工具の寿命短縮を防ぐ効果も期待できます。
加えて、ねじゲージなどの検査器具を用いた寸法確認を定期的に行うことで、加工品質のばらつきを防ぎ、安定した生産体制を維持できます。
切削加工によるねじ切りは、単なる締結部品の製造にとどまらず、製品の機能性や品質に直結する重要な工程です。旋盤やタップ、ダイス、さらにはCNC技術の進化によって、加工精度や生産性は大きく向上しています。
しかしながら、ねじ山の精度や耐久性を確保するためには、工具の選定や加工条件の最適化、そしてトラブルに対する事前の対策が欠かせません。加えて、検査体制の強化によって安定した品質を保つことができます。
製品価値を左右する“ねじ”という小さな部品にこそ、高度な加工技術と現場の知見が求められるのです。確かな技術とノウハウをもって、最適なねじ切り加工を実現していきましょう。
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