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切削熱によって溶けたワークの一部が、工具の先端部に付着してしまう現象のことを、溶着といいます。よくあるトラブルのひとつで、アルミニウムや軟鉄といった比較的やわらかいワークの場合に生じやすいです。工具への悪影響や製品不良を引き起こすため、注意が必要です。
工具とワークの接触部部分は、どうしても高圧かつ高温の状態になります。被削材をむしり取るようにして削る作業ですので、刃先はかなりの圧力を受けるのです。そして、高回転の摩擦や切削のエネルギーによって、数百度もの高温になることもあります。
高温状態になっても、被削材の切りくずなど熱が外部へ放たれる状態になっていれば、問題は起こりません。けれども、熱伝導率が悪い被削材や溶けやすい被削材のうち、特に切削工具との親和性が高いワークの場合、化学反応を起こして、溶着が起こりやすくなってしまうのです。
どのようなときに溶接が発生しやすいのでしょうか。その主なシーンや要素は、次のとおりです。
工具寿命にダメージを与えてしまいます。溶着により切削性能が低下した結果、切削作業にかかる時間も長くなってしまいます。摩耗量増加に直結するため、工具の寿命に大きく影響が出る課題です。
溶着したワークは切削作業によりさらに大きくなっていきます。そして、一定以上の大きさになると、工具から剥がれ落ちます。このとき、工具の刃先も一緒に剥がれ落ちてしまうのです。そのため、チッピングが起こり、切削抵抗は高くなります。すると、どうしても仕上げ面も劣化してしまうのです。しかも、チッピングによってできた細かい亀裂は、やがて工具破損も引き起こします。
切削工具にある溝が溶着によって埋まってしまうので、切粉の排出がスムーズにいかなくなります。排出されなかった切粉は、工具とワークとの間に嚙みこむことも予想されます。噛みこんだ切粉は当然、加工不良の原因となります。
おもな対策法として、次のようなものがあげられます。
切りくずの排出性をアップさせるには、すくい角を大きくするのが有効です。ちなみに、すくい角とは工具のすくい面および切削点の垂線がなす角のことです。すくい角が大きければ、工具がワークに入り込む角度を小さくすることができるため切粉の厚みが薄くなる、という理屈です。ただし、すくい角があまり大きいと、切れ刃の強度が下がってしまうことを留意しておくようにしましょう。
すくい角のないバニシングドリルを使いたい場合の対策法としては、エアロラップ処理やコーティング処理などがあげられます。エアロラップで刃具表面をスムーズにすることができますし、また、コーティングによって耐溶着性や熱伝導率をアップさせることも可能です。
クーラントを使って切削点の温度を下げながら加工作業をおこなえば、溶着の発生をおさえやすくなります。クーラントを外から上手に供給できないときには、スルースピンドルクーラントの使用がおすすめです。内部から刃先へのクーラント供給が可能になります。
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