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切削加工は、金属などの材料を工具で削り取り、目的の形状に仕上げる加工方法です。この過程で、工具と被削材(加工される材料)が接触し、摩擦や塑性変形によって熱が発生します。この熱が「切削温度」です。
切削温度は、加工の精度、工具の寿命、加工品の品質に大きな影響を与えるため、適切に管理することが重要です。
切削温度は、主に以下の3つの要因によって発生します。
工具が被削材に切り込む際、両者の間に摩擦が生じます。この摩擦によって熱が発生し、切削温度が上昇します。
被削材は、工具によって切り取られる際に、塑性変形(力を加えると変形し、力を取り除いても元の形に戻らない性質)を起こします。この変形エネルギーの一部が熱に変換され、切削温度を上昇させます。
切りくずが生成される際にも、せん断変形による発熱が生じます。また、切りくずが工具や被削材と接触しながら排出される際にも、摩擦熱が発生します。
切削温度が過度に高くなると、以下のような様々な問題が発生し、加工の品質や効率を著しく低下させる可能性があります。
高温にさらされた工具は、摩耗が加速し、寿命が短くなります。特に、高温硬さ(高温下での硬さ)が低い工具材質は、この影響を受けやすいです。
被削材や工具が熱膨張することで、寸法精度や表面粗さが悪化します。特に、熱膨張係数の大きい材料を加工する場合には注意が必要です。
高温により、被削材の表面が酸化したり、変質したりすることがあります。また、残留応力が発生し、強度や耐久性が低下する可能性もあります。
切削温度が非常に高くなると、被削材の一部が溶融し、工具に付着してしまう現象です。溶着が発生すると、工具の切れ味が著しく低下し、加工が困難になります。
切りくずの一部が工具の刃先に付着し、これが切れ刃の役割をしてしまう現象です。構成刃先は、加工精度を悪化させ、工具寿命を短縮させる原因となります。
急激な温度変化(加熱と冷却の繰り返し)によって、工具に微小な亀裂が発生することがあります。熱亀裂は、工具の破損につながる可能性があります。
切削温度を適切に管理し、上記の問題を防ぐためには、以下の対策が有効です。
切削油剤は、潤滑作用と冷却作用により、摩擦熱を低減し、切削温度を抑制します。油剤の種類(水溶性、不水溶性)、供給方法(外部給油、内部給油)、濃度などを適切に選択することが重要です。
切削速度、送り速度、切り込み深さを適切に調整することで、発熱量をコントロールできます。一般的に、低速・低送り・浅い切り込みは、切削温度を低く抑えることができますが、加工効率とのバランスを考慮する必要があります。
耐熱性や耐摩耗性に優れた工具材質(超硬合金、サーメット、セラミック、CBN、ダイヤモンドなど)を選択します。さらに、工具表面に耐熱性・耐摩耗性の高い膜(TiN、TiAlN、AlCrNなど)をコーティングすることで、工具寿命を延ばし、切削温度上昇を抑制できます。
工具の内部から切削油剤を微少量供給する方式です。従来の外部給油に比べて、油剤の使用量を大幅に削減できるため、環境負荷低減やコスト削減に貢献します。また、切削点に直接油剤を供給できるため、冷却効果も高くなります。
液体窒素などの極低温冷却剤を使用し、切削点を冷却する加工方法です。非常に高い冷却効果が得られ、難削材の加工や工具寿命の飛躍的な向上に有効ですが、設備コストが高いというデメリットもあります。
切れ刃の形状や逃げ角などを工夫することで、切りくずの排出性を向上させたり、摩擦熱を低減したりすることができます。
切削温度は、切削加工における重要な要素であり、加工の品質、工具寿命、加工効率に大きな影響を与えます。切削温度を適切に管理することで、加工トラブルを未然に防ぎ、生産性向上に繋げることができます。
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