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金属や樹脂などを削って、希望の形を作り出す切削加工。ものづくりの現場には欠かせない技術ですが、必ず発生してしまうのが「切粉(きりこ)」です。この切粉、ただの削りカスと侮ってはいけません。放置すると、加工精度が落ちたり、工具の寿命が縮んだり、最悪の場合は機械の故障や作業者の怪我につながることも…。
この記事では、切粉とは何か、なぜ問題なのか、そしてどう対策すれば良いのかを、徹底的に解説していきます。
切粉とは、切削加工によって材料が削り取られた際に発生する、削りくずのことです。旋盤で金属を削った時に出る、くるくると丸まったものや、ドリルで穴を開けた時に出る、細かい粉のようなもの、これらは全て切粉です。切削加工は、材料を削り取ることで形を作る加工方法なので、切粉の発生は避けられません。
切粉は、工具が材料に食い込み、材料が変形・破壊されることで発生します。材料は、工具によって強い力を受けると、まず「せん断変形」を起こします。これは、材料の内部で、互いにずれるように変形する現象です。さらに力が加わると、「塑性変形」を起こします。これは、力を加えて変形させた後、力を取り除いても元の形に戻らない変形です。そして、最終的に材料が破壊され、切粉となります。
切粉の形状は、材料の硬さや粘り強さ、工具の形状、切削速度、送り量、切り込み深さなど、様々な要因によって変化します。これらの条件を適切にコントロールすることが、良好な切粉処理の第一歩となります。
切粉は、単なるゴミではありません。放置すると、様々な問題を引き起こし、切削加工の現場に大きな悪影響を及ぼします。
切粉が工具や材料に絡みつくと、工具が本来の位置からずれたり、振動が発生したりします。その結果、寸法が狂ったり、表面が荒れたりして、加工精度が低下します。
切粉が刃先に付着したり、再切削されたりすると、刃先が摩耗したり、欠けたりしやすくなります。工具の寿命が短くなると、工具の交換頻度が増え、コスト増加につながります。
切粉が機械の隙間に詰まったり、摺動部(こすれ合う部分)に入り込んだりすると、機械の動作不良や故障の原因になります。最悪の場合、機械の修理や交換が必要になり、大きな損失につながります。
切粉が飛散すると、作業者の目に入ったり、皮膚に付着したりして、怪我の原因になります。また、高温の切粉は火災を考慮してリスクが高まるため、十分な注意が必要です。さらに、細かい切粉が空気中に舞い上がると、粉塵爆発の危険性や、作業者の呼吸器系への悪影響も懸念されます。
大量に発生する切粉は、産業廃棄物として適切に処理する必要があります。切粉の処理にはコストがかかり、環境負荷も大きくなります。
切粉による問題を解決し、切削加工の効率と安全性を高めるためには、適切な対策が不可欠です。ここでは、現場ですぐに実践できる、7つの効果的な切粉対策を紹介します。
切粉を細かく分断し、スムーズに排出するための「ブレーカ」と呼ばれる溝や突起が付いたインサート(刃先交換式工具のチップ)を選びましょう。
被削材の材質に合わせて、最適な工具材種を選びましょう。超硬合金、サーメット、CBN(立方晶窒化ホウ素)、PCD(焼結ダイヤモンド)など、様々な材種があります。それぞれの特性を理解し、適切なものを選ぶことが重要です。
工具のコーティングは、耐摩耗性や耐熱性を向上させ、工具寿命を延ばす効果があります。被削材や加工条件に合わせて、適切なコーティングを選びましょう。
切削速度、送り量、切り込み深さといった切削条件は、切粉の形状や工具への負担に大きく影響します。これらの条件を適切に調整することで、切粉の発生を抑制し、工具寿命を延ばすことができます。
クーラントは、工具と材料の摩擦を軽減し、冷却効果を向上させるとともに、切粉の排出を助ける役割を果たします。種類は大きく分けて、水溶性クーラントと油性クーラントの2つに分けられます。水溶性タイプは冷却効果に優れ、油性タイプは潤滑性が高いのが特徴です。被軽減材の種類や加工方法に応じて、最適なクーラントを選択することが重要です。
ステップ加工(階段状に少しずつ削る加工)や、ヘリカル加工(螺旋状に削る加工)など、切粉の排出を促進する加工方法を採用することも有効です。
切粉吸引装置は、切削加工と同時に切粉を強制的に吸引し、機械の周囲を清潔に保ちます。エアーブローは、切粉を手軽に吹き飛ばすことができますが、周囲への飛散に注意が必要です
工具の経路を最適化することで、切粉の排出を改善できる場合があります。加工前に、シミュレーションソフトを使って、切粉の排出状況を確認することも有効です。
機械や周辺装置を定期的に清掃し、切粉が溜まらないようにしましょう。また、機械のメンテナンスを適切に行い、機械の性能を維持することも重要です。
切削加工において、切粉は避けられない存在ですが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑え、より効率的で安全な作業環境を実現できます。
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