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切削加工の現場では、設計図どおりの寸法を実現することが求められます。しかし、現実には加工機や材料、周辺環境などの要因によって微細な誤差が生じるため、「公差」を設定して対応する必要があります。この記事では、公差の基本的な考え方から、精度を左右する切削加工機との関連性、公差管理のポイントまでを詳しく解説いたします。
公差とは、製品の寸法に対して許容される誤差の範囲を意味します。理想的には設計図どおりの寸法で加工したいところですが、実際には使用する機械の精度や工具の状態、環境条件などにより微細なズレが避けられません。そこであらかじめ許容範囲を設定しておくことで、品質を担保しつつ量産性を確保することができます。公差が狭すぎると製造コストが上がる一方、広すぎると品質低下のリスクが生じるため、適切なバランスを見極めることが重要になります。
特定の公差が図面に記載されていない場合に適用される、あらかじめ規定された標準的な許容誤差です。主に大量生産品などで、効率よく品質を管理するために活用されます。
加工物の長さ・幅・厚さなど、数値的な寸法に対して設定される誤差範囲を示します。これは最も基本的な公差であり、設計値と実測値のズレを許容するための目安として機能します。
寸法そのものではなく、形状の正確さや部品同士の相対的な位置関係を規定する公差です。直角度、真円度、平行度などが該当し、組立精度を高めるうえで非常に重要な要素となります。
軸と穴のような嵌合する部品において、適切なすき間またはしまり具合を実現するために用いられる公差です。機械の可動部や回転部品など、摩擦やガタつきに影響を与えるため、正確な選定が求められます。
日本工業規格(JIS B 0405:1991)では、公差の精密度に応じて「等級」が定められており、加工内容や部品用途に応じて使い分けが必要です。
参照元:日本産業標準調査会(https://kikakurui.com/b0/B0405-1991-01.html)
公差を適切に管理することは、製造プロセス全体の信頼性を高めるうえで不可欠です。製品が設計通りの機能を発揮するためには、単に寸法を測定するだけでなく、その誤差範囲を一貫してコントロールする仕組みが求められます。たとえば、製造ラインにおいてどの段階で寸法確認を行うか、どのような測定機器を用いるかといった工程設計が、公差管理の質を左右します。また、歩留まりや不良率にも大きく関わるため、品質保証の観点からも極めて重要です。公差管理は単なる精度調整ではなく、生産性と品質を両立させるための基盤なのです。
公差管理を行ううえでは、使用する切削加工機の性能を十分に理解することが欠かせません。たとえば、CNCマシニングセンタのように高精度な制御が可能な装置では、±0.002mmという極めて狭い公差も実現できます。反面、汎用旋盤などの手動加工機では、どうしても許容できる誤差が広くなってしまいます。つまり、達成可能な公差の範囲は、機械の種類や仕様に大きく依存しており、それを踏まえた上で設計・加工・検査の体制を整える必要があります。
実際の加工現場では、さまざまな要因が公差に影響を与えます。たとえば、工具の摩耗が進行すると寸法精度にズレが生じやすくなりますし、切削速度や送り速度といった条件も仕上がりに直結します。また、材料の硬度や熱膨張性も重要なポイントで、特にアルミやステンレスなど熱影響を受けやすい素材を扱う場合には注意が必要です。さらに、室温や湿度といった環境条件も微妙な寸法変化の原因となるため、管理体制の整備と日々の点検が不可欠となります。
切削加工における公差は、製品の信頼性や品質を決定づける重要な指標です。公差を適切に設計し、管理することによって、加工不良のリスクを抑え、製品の安定供給を実現することができます。その際、切削加工機の性能や加工条件、使用する材料の特性など、さまざまな要因を総合的に考慮することが求められます。コストを意識しつつも、品質を落とさないための公差設定は、設計者と加工現場双方の理解と連携によってこそ成り立つのです。
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