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金属加工の現場では、切削加工において「ひずみ」が発生することで、製品の精度や品質に悪影響を及ぼすことがあります。わずかな変形でも、高精度が求められる部品にとっては致命的な誤差につながるため、ひずみの理解とその対策は非常に重要です。
本記事では、切削加工における「ひずみ」の基本的な概念から、発生する主な原因と対策について紹介します。
ひずみとは、金属に外部から力が加わった際に生じる変形のことを指します。切削加工においては、加工時の外力や熱によって、素材が伸びたり縮んだり、あるいはねじれたりする現象がこれに該当します。
ひずみには方向や変化の時間軸によっていくつかの分類があります。
こうしたひずみは、目視では確認しづらいことも多く、精密加工においては予期せぬ寸法誤差の原因となるため、常に考慮が必要です。
切削加工でひずみが発生する要因は、物理的・材料的・機械的な複合的要素によって構成されています。以下に主要な原因を解説します。
金属に外力を加えると、それに抗う内部応力が発生します。加工後に外力が除かれても、この内部に残った力(残留応力)が解放されることで、変形が生じます。とくに高硬度材や応力の偏りがある材料では顕著です。
切削工具とワークピースの接触部では、600~1000℃にもなる高温が発生することがあります。この切削熱によって金属が膨張し、冷却後に収縮する過程でひずみが生まれます。
加工中の固定(クランプ)方法が不適切な場合、ワークに過剰な力が加わることで、局所的な変形や内部応力の偏りが生じることがあります。このような応力は、加工後にクランプを解除した際に解放され、反りやひずみといった形状変化として現れる可能性があります。とくに、薄い板材や小型部品では剛性が低いため、クランプ力の加減や支持点の設計が精度に大きな影響を与えます。
薄板や不均質材(密度ムラ・異材混合など)は、外力に対する剛性が低く、ひずみやすい傾向があります。また、片面加工や部分的な肉厚変更(ハーフ加工)なども応力集中を招き、変形の要因となります。
切削加工によるひずみは完全に避けることは難しいものの、発生を最小限に抑えるための技術的工夫はいくつも存在します。以下に代表的な対策を紹介します。
加工前に素材へアニーリング(焼なまし)やサブゼロ処理などの熱処理を行うことで、内部応力を緩和することができます。これにより、加工後の変形リスクを大幅に低減できます。
設計段階で現実的な公差設定を行い、わずかなひずみが製品機能に影響しない範囲を確保することが重要です。また、加工中は送り速度を抑え、切削量を少なくすることで、切削熱の蓄積を抑える効果が期待できます。
NC加工では、応力分散を意識したパス設計やクランプの解除タイミングなど、加工プログラムの作成が精度に直結します。とくに曲面や薄板のような難加工部品では、治具の設計も含めて計画的なプログラム設計が求められます。
クランプ力は「強ければ良い」というものではなく、変形を引き起こさない最小限の力加減が求められます。接触面積の確保やクランプ方向の分散、冶具の形状設計なども、歪み対策における重要な要素です。
切削加工における「ひずみ」は、加工精度や製品の品質に直接関わる重要な問題です。その原因は、材料特性・応力・熱・機械条件など多岐にわたり、複合的に対策を講じる必要があります。
歪みを完全にゼロにすることは難しいものの、熱処理や工程設計、プログラム最適化、クランプ方法の工夫などを通じて、その発生を最小限に抑えることは可能です。これらの対策は、製品の安定した品質を確保し、高精度なものづくりを支える基盤とも言えるでしょう。
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